2台目のオーダーフレームで、CORNER BIKES DISCを注文。昨年末に頼んだフレームが4ヶ月で形になってきたのでオーダーについて少し整理してまとめておく。CORNERのオーダーフレーム作るに至るまで。
前回はRODEOのフォークについて書いたので、ご参考までに。今回はフレームの話。
バイクの買い方、パーツの選び方というのは、自分の好みや価値観をわかりやすく反映するなあと思う。お金の掛け方や割り振り、カラー、メーカーの性質。予算の幅は人それぞれと言っても、それぞれの範囲で予算は有限なのでそれをどこに割り振るかということになる。初めてのバイクだからとにかく安くという人もいれば、後からお金をかけるなら最初からちゃんとしたものを、という人もいる。分からないことも多いけど、既にCORNERに乗ってる人の意見に耳を傾けたり、完成車のイメージを思い浮かべながらアウトラインを決めていった
2台目のオーダーフレーム
今乗っているクロモリのロードバイクは、東大阪の友人の店「Twopedal」でオーダーしたショップオリジナル。あまり乗ってる人は見なくて、ショップとしてもガンガンそれを押していこうという感じはそこまでないのだけど、3年乗ってみてとてもバランスの良いフレームだなと思う。その前はFELTのクロスバイクにずっと乗ってたので「どういうバイクが欲しいか」というのは外観の部分が強くて、「そもそも自分がどれくらいロードバイクに乗るのか」「どんなところを、どのくらい走るのか」「どのパーツがどんな違いがあるのか」というはその時点では曖昧だった。
その中で、キャリパーブレーキで、700 x 28cがマックスのタイヤクリアランスでというのはそのタイミングでは標準的だったけど、周りの人が乗ってるバイクや走ってる道、それに影響を受けて自分が走ってみたいと思う道の状況と合わなくなってきたなあというのが実際のところ。今のバイク自体が悪いというのではなく、新しいバイクがあればもっと自由度や選択肢が広がるなあ、と。
昨年秋くらいにJAMISやKONAが出した新しいモデルのグラベルロードを見て、エントリークラスの車種が20万切ってこの感じならとりあえず楽しそうだなと思うところから始まって、CinelliのKing Zydecoもかっこいいなとかその段階ではまだ完成車買おうかなと思っていた。ただ、「とりあえず完成車のグラベルロード乗ってみて、気が向いたら新しいのを作る」というのはどうも自分の性格に合わないのも事実で、こうなったらちゃんと作ろうか、とバカみたいなことを思い出す。
一緒に走ってる友人にそんなことを話してみても「そりゃ山道走るならオーダー一択でしょ」という人もいれば「既成のフレームの方が価格は抑えていろいろ遊べるから絶対いいよ」という人もいて、結局のところ「乗りたいバイクに乗るのがいい」という当たり前の結論にたどり着く。作るしかない、となる(アホです)
生活に必要なものは、オーダーで作るもの
よくよく考えると、10年前にマンションを買ったときには家具をいくつかオーダーしていた。食器棚、ダイニングテーブル、テレビボード。家の中で毎日使って毎日手で触れるものは自分が本当に納得できるものを生活に合わせて作るというのは、僕に取ってけっこう当たり前のことだったんだと思い出す。
食器棚は腰高で4本脚の北欧アンティーク的なキャビネットタイプ。ナラの総無垢で、抽斗と扉はインセット。無塗装でメンテナンスもしやすく長く使える仕上げ。ダイニングテーブルはプロパーのサイズだけを変更して高さや幅を変えたパターンオーダー。イラレだかパワポだかでざっくりした指示書を作ってあとの細かい技術仕様は職人さんにお任せだった。
家具のオーダー、やり方と頼むところさえ間違えなければそれほど高いということもないし、なんならサイズやディテールが自分の思った通りにやってもらってTRUCKなんかよりも安いからね。TRUCK高杉問題について。まあそれはいいけど。
家具はイタリア語でMOBILEというけど、動くのがMOBILE(動産)で動かないのがIMMOBILE(不動産)なので、引っ越したり世代が変わったりしても引き継いで使える財産だからね。子供がどうするかは僕が決めることではないけれど、10年使ってなんの不満もないしテーブルは汚れてきたのでメンテに出そうかと思っているけど。
そうそう、他にも大学の卒業式にモリカゲシャツでオーダーしたり、結婚式のジャケットをパターンオーダーで作ったり。必要なものは、自分が使いやすいようにして、自分だけのものを作るのは、違和感なく普通のことなんですよ。多分。
CORNER DISC ROADを注文するまで
コーナーバイクの寒川さんを初めて見たのは4年ほど前のサイスポ紙面。堺にこんな自転車作る人がおるんやなあと知ったのは自分の1台目をオーダーした後で、また何かの機会に話だけでもできたら面白いかなあとは思っていた。
それからCORNER乗りの方々と知り合い、ソウカワガレージにもお邪魔するようになり、お話をお伺いするなかで「ああ、この人ええ人やなあ。好きやなあ」というリスペクトがまずあって、それから「この人にバイク作ってもらったらおもろそうやな」と思うようになった。
家から自転車で20分くらいの近所にフレームビルダーがいて、大阪にいくつかあるような老舗のビルダーではなく(1台目はそういうタイプのところのOEM)同世代の人がやっているというのは「なんかええなあ」という言葉にしにくい感覚みたいなものがあった。周りにCORNER乗りの人がちらほらいるので、乗せてもらったりしているうちに「オーダーのクロモリでも今のと全然ちゃうんやなあ」ということをじわじわと感じていく。
ときには友人と、たまには一人で工房に足繁く通い寒川さんとも話していて、それこそ他のメーカー車の購入相談にも乗ってもらったりしてた。他のCORNER乗りの人がシングルトラックをガンガン走ってた同じバイクで次の週に乗鞍登ってたりするのをみて「そんなこともできるんか、すげえなあ」と思ったのが決め手になった。
最近よく見るようになった「ALL ROAD」という考え方がまさにそれで、グラベルから乗鞍までを一台で、そりゃまあガチガチのマウンテンで走るようなところは無理があるだろうけど、マンション住まいにも優しい「1台で一通り賄えるバイク」というのは自分が思っている走り方や「自転車でやりたいこと」のイメージにすごくマッチした。めんどくさがりなので何台も管理するのはやっぱり無理がある。
自分の欲しいもの、使いたいものに細かく合わせるための手段としてのスチールバイク。とか言い出すとサイスポの受け売りみたいな文句になってしまうけどまあそういうことだ。
「グラベルバイクって、海外みたいなロングダートのグラベルがない中で実際どういうところを走るんですかね」と寒川さんに聞いてみて「道はけっこうあるし、どんな道か分からへんからどこでも走れるバイクで探しながら走るのが一番おもろいんちゃいますかねえ」と言われたのが自分には響いた。
そうそう、カーボンのロードバイク的な「長い距離を、速く、遠くまで」というのは、数年乗ってみて感じた自分の自転車の楽しみ方とは少し違っている。速く強いのはルートや行動の選択肢を増やすので良いことなんだけど、レースもいらんしブルベも興味なく、日常生活の中で「旅」に出られるバイクの面白さみたいなのがやっぱり好きなんやなあと思ってた僕には「道を探すことの面白さ」というのはすごく共感できる感覚だった。
国土地理院の地図を見てるとそれまでGoogleマップで見たことない道がひらけたり、ちょっと気になるところを走ろうと思ったらガレてたりぬかるんでたりして躊躇するのが煩わしかったり、自分の楽しみ方にマッチしてるのはこういうバイクやなあというのがおおよそ出来上がってきた。そして気がつくと内金を払っていた。
フレーム設計までの流れ
聞いてみると、ジオメトリは細かく決めるタイプの人とお任せの人が半々みたいで僕は後者。実際何台も乗り継いできたわけじゃないのでよく分からんし、家具やスーツ、シャツなど、今までもそうだったけどオーダーメイドは作り手と一緒に作るものなので、そこに至るまでにおおよそ自分がどんなことが好きで何を求めてるかは伝えていたし任せた方がいいだろうと。
採寸は、身体の寸法厳密に測ってみたいなことではなく、今のバイクに乗って目の前でひたすら8の字に乗るのを眺められ続ける。恥ずかしい。それで乗り方の癖や今のサイズ感をみて、フレーム測った上で設計に落としてもらった。なるほどなあ。その前のステップとしてロードのオーバーホールもやってもらったので今のバイクのこともある程度は分かってもらえてるだろうというのもある。少しずつビルダーさんとの関係を作っていく感じがある。
ちなみに設計や組み立てを他のショップに依頼することもできるし、大半のオーダーフレームはそうやってできているんだけど、せっかく家の近くでビルダーさんと直接やれるという醍醐味があるのでそれをすっ飛ばすのはちょっともったいない。ショップ経由で頼む面白さみたいなものももちろんあるんだけどそれはまたの機会に。
フレームの構成や設計のコンセプトみたいなものを話して決めて行き、自分の希望もいろいろと伝える。ホリゾンタルフレームが好きだけど、「トップチューブが水平であること」は全体の優先度としてはそこまででもないので、ほぼ水平くらいだけど軽くスローピング。ボトルケージは3箇所、トップチューブ上にもボルトがついてるバイクも増えてるけど、そこまでいらんかなあってのとなんかあったらviolé strapで留めたらいいかとそこは拘らず。
キャリアダボはシートステイの横っ腹に開ける方式で飛び出さず目立たない。素晴らしい。タイヤ幅は先に選んでいたRODEOのフォークに合わせて700c × 43まで入るサイズ。もっと太いのが欲しくなるかもだけど、大き過ぎても重いしそれ以上なら素直に650 × 47にすればいいかなと。なんでもは無理なので優先順位を明確にする。
ロウ付のフィレット溶接で、シートステイの接合部が綺麗なのはCORNERの特徴でこれがとても良い。今はラグ溶接なのでクロモリでも全然変わった感じになるのは楽しみだし、その前に乗ってたアルミのクロスバイクは値段も安かったけど接合部が本当に残念。パイプの接合部がきれいというのは実は自分にとってもとても大事なことだったりする。自転車も車もお尻が大切で、ここの接合が好みじゃないと愛せないなあと思う。
あと、オーダーで伝えたことは「軽さは大切やけど、そこが最優先でもないので適当にバランス良くお願いします」ということ。軽さだけならやっぱりカーボンで良いような気もするし、あとは服部製作所のシクロ用超軽量フレームで王滝グラベルで上位に入ったというバイクにも乗せてもらったことがあったけど、ああ、これは違うなあと。上手い人がうまく使えばとても良いバイクなんだと思うけど、僕にはこれは怖いなあと思った。「ピーキー過ぎてお前にゃ無理だよ」とはこういうことをいうんだな。パーツ選定にもよるけれど完成時の重量見込みは今より1.5kg程度軽くなる感じだったので、だったら「とことん」でなくてもいいやと思った。
パーツ選定について
パーツは追々考えていこうかと思いつつ、ブラックフライデーや年末セールなど、安くなるタイミングに少しずつ相談して「これどうですかね」と都度メール送ったりして集めて行った。
ソウカワガレージのインスタ見ててもわかるんだけど「これがええよ」みたいな定番アッセンブルって少なくて、パーツ選定もけっこう客の主体性に任せられるというか「こんなバイク乗りたいねん」という思いをサポートしてくれる感じがあった。
メーカーの良し悪し、それだったらこっちにした方が、「それいいですね」など、適宜アドバイスをもらいつつ全体像を少しずつ詰めていく。こちらの要望や悩んでるポイントを汲み取ってくれるのもありがたい。
コンポはGRXの600シリーズが中心。フロントシングルにしてあとからパーツ変えるのもやりやすいようにするけどDi2は断念。コックピットはアメリカパーツ山盛りでSalsaの新しいハンドルとかシルバーパーツ多用して少しクラシックな雰囲気出しつつ。一番悩んだのがホイールか。どのくらいお金が使えるか、ハブはホワイトがいいぞと周りのひとに「それ以外選択肢ないんか」くらい勧められ、よくわからないながらもいろいろ選んで決めて行った。
ホイールは予算とデザイン、使い方など一番悩んで一番人に相談したな。友人や関係ないショップのフタッフ、SNSなど。最終的には自分で決めて買うんだけど「何を重要視してるか」「何が判断のポイントか」みたいなのはいろんな人の話を聞いた。
あとは全体的に「新モデル」「限定発売」「新カラー発売開始」みたいなタイミングが合うものの中から少しずつ揃えていった感じ。枯れてきた定番ではなくて今新しい感じのモデル、みたいなやつね。新しいモノ好きだし。
ローカルでお金を使う
コロナ禍の中で小さいけど魅力的な沢山の自転車関連ビジネスが大変になってきている。「買い物は投票だ」というコピー自体は何となく苦手なんだけど言わんとすることはすごくよくわかる。
物を買うことは、その人やお店を応援するということとほぼイコールなので「何を、誰から買うか」ということはとても大事。
レペゼン地元の感じもありつつ、堺市内に身近に話せるビルダーさんと世界有数のパーツメーカーがあるというのはとても良い。全部日本の、とはいかないしシマノのパーツも堺の工場でやってるとも限らないんだろうけど、「フレームとコンポーネントを地元で賄える環境」って世界中にどれだけあるのかと思うとニヤニヤしてくる。
名古屋のサークルズがブログで書いてた「ローカルを大事にしよう」という文章がすごく好きだった
もし家で暇を持て余しているのであれば、自分のお金がどこでどのような形で使われているのかを今一度考えてみるのもいいかもしれません。 そして、この非常事態が終わってから、自分が住んでいる街がどのようになってほしいかを考えるのもいいのではないでしょうか? 地元のコミュニティーにおいてまだ経済が回っているのであれば、できれば地元を支援し、あなたのお金をその地域コミュニティーで使ってみてください。
地元のコミュニティでフレームとコンポーネントを手に入れて、地元のグラベルを走る。友人を地元に招いて走ったり、友人の地元を訪ねてアテンドしてもらう。「しまなみ、阿蘇山走りたい!」と同じくらい「あいつのホームコース面白そうやから走ってみたい」が価値のあることになってくる。
遠出できないタイミングだからこそローカルのコミュニティを精一杯楽しむバイク。フレームがようやく仕上がって後は塗装と組立てを待つだけ。
うーむ、こんなにワクワクすることはそうそうない。